ホテルスタッフというと、華やかなイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、実は、その仕事内容は、想像以上に大変です。
ドラマに出てくるようなカッコいい姿に憧れてホテルで働いてみたいと考えている場合、理想と現実のギャップが大きすぎて、「入社してみたら辛い」と後悔する可能性もあります。
なかでも、宴会場で、料理やドリンクのサービスなどを担当する「バンケットスタッフ」は、ホテルのなかでも一番忙しいポジションです。
入社後に後悔しないよう、以下のようなデメリットもあることを知っておきましょう。
▼こんな人が書いています。

- ホテル勤続年数14年
- 高校卒業後、ホテルのバンケット部門に就職し2年間働く。
- その後、レストラン部門、ウェディング部門を経て、現在はパート社員。
バンケットスタッフの主な業務

バンケットとは、「宴会」を意味する言葉です。つまり、ホテルのバンケット係とは、結婚披露宴や懇親会などにおいて、接客対応・食事やドリンクの配膳を担当するスタッフのことをいいます。
きめ細やかなサービスが求められるだけでなく、身だしなみや立ち居振る舞いも重視されます。
料理やドリンクの配膳だけでなく、宴会前のセッティング、終了後の片づけなど、宴会に関わる一連の業務がバンケットスタッフの仕事になります。
私の勤めているホテルでは、宴会で使用する食器類集め、グラス磨きなんかもバンケットスタッフが担当しており、実は、地味で面倒くさい仕事が多いのです。


ホテルのバンケットスタッフとして働くデメリットを5つ紹介

力仕事が多く体力勝負
ただ料理を運ぶだけのシンプルな仕事に見えますが、料理がのったおも〜いトレイを、片手だけで支えて、広い会場を何往復もしなくてはいけないため、見た目以上に大変です。
数百人規模の宴席となると、座席やテーブルの感覚も狭くなり、料理をテーブルに置くのも至難の業です。片付けや次の宴会のセッティングでは、重いワゴンや、テーブル、椅子なども運ぶため、かなり体力が必要になります。
特に、女性スタッフは、ずっとヒールで立ちっぱなしなので、仕事が終わる頃には、足がパンパンで疲労もかなりのものでしょう。
また、ホテルには、宴会が終わった後、次の宴会の会場に作りかえる「どんでん」という大変な作業があり(歌舞伎のどんでん返しが語源)、どんでん中は、みんな余裕がないので従業員同士もピリピリして、まるで戦場のような空気になります。
例えば、数百名の披露宴会場を、30分以内で次の披露宴会場につくりかえなければならないときは、バンケットスタッフだけでは手が足りないので、ホテル内で手の空いているスタッフを総動員してどんでんを行ったりします。
『自分が今何をすべきか』、『優先順位はどうか』、など理解して動ける能力や、チームワークが大切で、宴会が始まると、穏やかな表情でお客様をお出迎えしていますが、裏側は、意外と体育会系な職業だったりします。
休憩時間が確保しにくい
食事を伴う宴会が多いことから、昼は11時から14時頃くらい、夜は18時から21時くらいがもっとも忙しい時間帯なため、会場キャプションが、進行具合を見て、指示をだします。
宴会が始まる前や、宴会の合間にポジションを埋めながら順番に食事休憩に入るので、ゆっくりしている暇はなく、食事を済ませたら急いで現場に戻らなくてはならないのが、バンケットスタッフのおきてです。
休憩のために数人のスタッフが抜けても、問題ないくらいの人員がいるホテルならいいですが、人手不足の場合、どうしてもお客様優先になってしまうため、十分な休憩時間は確保しにくいでしょう。
拘束時間が長い
宴席が終わっても、後片付けと翌日のセッティングが残っているんですが、これが終わりの見えなくて、とてもしんどい作業です。
全会場片付けてセッティングするとなると、それだけで数時間かかるので、必然的に退社時間がが22時くらいになってしまいます。
結婚披露宴が連日続く日や、ゴールデンウィークなどは、ホテルのスタッフ総動員で、夜中の1時過ぎまでかかったこともありました。
帰りが遅いので、新入社員の親御さんが心配して電話してきたり、仕事をやめなさいと説得された子も何人かいるようです。
働き方改革により、労働環境が見直されているホテルも多いと思いますが、繁忙期などは、どうしても遅くまで働かなくてはいけない場合もあるでしょう。
休みが不定期
ホテル業は、お客さまがお休みの日こそ仕事が忙しいので、基本的に、土日祝日は休めず、友達や家族と休みが合いづらいというデメリットがあります。
私の働くホテルでは、法事のケータリングサービスもバンケットスタッフが担当しているため、「やっと明日休みだ」と思っていても、急な法事が入り休みが延期になることもしばしばありました。
せっかく予定があっても、仕事を優先して、友達や恋人との予定をキャンセルしなければならないときもあるかもしれません。
また、個人的な理由で長期休暇をとると、他のスタッフに迷惑がかかるという謎の連帯感があり、不幸ごとなどやむを得ない理由以外は有給をとってはいけない雰囲気もありました。
給料が少ない
ホテルにもよると思いますが、ホテルの給料は、日本の平均年収と比べると低い傾向にあり、多くの人が仕事量に合っていないと不満を感じて転職していきます。
わたしが20代のころは、手取りが20万こえたことがなかったし、残業代で給料を稼いでいたので、閑散期と繁忙期の差が結構ありました。
そのため、家族を養わなければいけない人や、一人暮らしをしている人が続けていくには少し厳しく、実際にそのような理由でやめていく人も多いです。
自分より楽な仕事で、高い給料やボーナスをもらっている人もいると、不満や違和感を感じることもあるでしょう。


最後に……

バンケットスタッフとして入社した同期は、当時7人いましたが、現在残っているのはわたしだけです。
わたしは、入社2年目で、自分の希望が通り、別な部署に移動になったので、なんとか続けてこれましたが、そうでなければとっくに辞めていました。
宴会課に、異動をつげられた人は、ほぼ100%の確率で辞めていきます。それだけ、労働条件が合わなかったり、大変だと知っているからです。
短期のバイトとかなら勉強になっていいかもしれませんが、長く働くのはおすすめしません。
コメント